No.015 権力の品格Chapter4「うすかわ饅頭!?」

No.012でも述べているが、民主党は3月25日に道路政策大綱として、高速道路の無料化を次期総選挙のマニフェストとして改めて決定している。こちらとしての動機はやや短絡だが、手っ取り早く無料化を実現させるためには政権交代しかない、とも述べさせていただいた。

さて、この高速道路無料化問題は民主党の方針であるが、こと道路問題に関しては馬渕澄夫議員 http://www.mauti.net/ が事実上の切り込み隊長のようなので、氏の国会での質疑を中心に今回はまとめてみた。

最新だと、5月8日の審議だが、そこに入る前に2月20日の予算審議での馬渕議員の質疑に注目したい。
この時のテーマは「高速道路無料化による経済効果」だ。審議を再現すると、

馬渕議員 「高速道路は極めて重要なインフラであり無料化をずっと主張してきた。現在政府が計画する高速道路割引施策について、通行するクルマすべておしなべて何割減に相当するものか」
   
金子国交相 「おしなべて3割引である」
   
馬渕議員 「10年間で3000億円を拠出する政府の高速道路割引施策について効果を検証したのか? 国土交通省の研究機関である国土交通省国土技術政策総合研究所(通称:国総研)の報告書[平成19年度高速道路料金割引社会実験効果推計調査検討業務報告書]によると、全国の幹線道路網を対象に道路料金を一律3割、5割とそれぞれ割引された場合、どのようなかたちで効果があるかを路線別、地域別に推計したものであるとして、報告書によると割引にした場合5200億円の便益が得られることに相当するが」
と説明。さらに、
   
馬渕議員 「10割引、無料化した場合の便益試算は行われていないが、既に有料高速道路を無料化した地域では、山陰道の224%増をはじめ交通量が増加している。報告書の結果から10割引、無料化の試算で2兆3000億円近くの便益が得られることが想定されるうえ、使用者が高速料金を払わずに済むことにより2兆5000億円と併せて4兆8000億円、約5兆円規模の経済効果が得られることを意味する」

と、高速料金無料化の意義を強調、言及した。それに対し 麻生首相 は、

「基本的にタダにすれば効果あるでしょう」と述べるにとどまり、高速料金無料化により便宜を受ける者と受けない者とに分かれ、平等性に欠けるのではないかと反論。

 
5月8日の国会補正予算審議での馬渕澄夫議員。民主党・高速道路無料化案のまとめ役になっている。質疑の言葉のはしはしで、山崎養世氏が唱える提言と重複する部分が見える。

馬淵議員は、高速料金無料化による経済効果は、単に使用者の料金負担が減るだけでなく、地域間の格差是正、地域の活性化、物流コストおよび物品の値段が下がるとして経済効果は大きいと主張。
政府が進めようとする政策は3割引で5200億円の効用があると判断しているが、無料化により2兆3000億円に相当する利益が出ると算定されるとその効果の違いを指摘した。
その上で、馬淵議員は報告書のなかに不自然な記載が多々あると指摘。調べたところ、本来IC割引の検証も行い、2兆7000億円の便益が得られるとの試算結果が出ているとして、なぜ、検証を行っているにも係わらず無料化を検討しないのか。民主党の政策だから3割引というと中途半端な案を出しているのではないかと方針転換を迫った。

整理すると、民主党独自で行った無料化による経済効果試算は計約5兆円になるが、政府
自民党は、頑として現状の仕組みを変える気はない、という平行線の話しだ。

目先の経済効果を第一としている政府(与党)であるはずなのに、既得権益に抵触する案件になると、曖昧な対応で終わってしまうのは今も昔もほとんど変わりない。

うすかわ饅頭は美味しい!?

次に5月8日に行われた審議。テーマは「道路公団民営化の趣旨を大きく逸脱するインチキ!?」について。
冒頭にETCの普及は、国交省の外郭団体であるORSEへの便宜ではないか、と指摘。これ、あまりにも見え見えなことなので、スルーさせていただき、かんじんのメインメニューに入る。

馬渕議員 「第4回国幹会議(国土開発幹線自動車道建設会議、通称:国幹会議)で突然、4区間が着工を前提とした整備計画に格上げされ、6区間の4車線化が決定された。概算事業費合計1兆8700億円もの事業が、わずか2時間の会議で決定された。おかしいとは思わないか」
   
麻生首相 「問題はない」
   
馬渕議員
 

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「しかも、この整備方式が、業界では うすかわ方式 (図参照)と呼ばれる合併施行方式で、これまで高速道路建設では採用されたことのない方式である。
さらに、この方式では事業費のうち、国の直轄方式部分が6割から9割を占め、税金が投入されることとなっている。この方式は平成13年12月19日の道路公団民営化[小泉政権時]に際しての閣議決定[国費は平成14年度以降、投入しない]に反し、不採算道路は建設しないとする民営化の趣旨にも反するのではないか」
注:うすかわ方式であろうが何であろうが、少なくても高速道路建設は、道路会社の主体 性によって行われるという構図ではなく、国(官)主導で依然として行われている構図が露呈したことになる。

   
麻生首相、
金子国交相
「国の直轄事業に税金を投入するものであり、なんら問題はい」
   
馬渕議員 「官僚を使いこなすのではなく、官僚に乗っている」
   
麻生首相 「見解を異にしている」

例によって水掛け論に終始するのが国会審議の常とはいえ、ここまでの見解の食い違いを
見てしまうと、もはや笑いすらも出ない。

話しをシンプルにしてみよう。
● 高速道路無料化による経済効果は約5兆円にものぼる、と民主党は試算している。
● うすかわ饅頭方式(合併施行方式)を高速道路建設に導入することは、
  民営化の趣旨を著しく逸脱している。
● 民間会社である、道路会社は自らの意志で道路を建設するのが筋で、
  建設費用のほとんどを国費(税金)でまかなう、 とすること自体に矛盾がある。
  つまり、支出は国で、儲けは道路会社という構図は民間事業の常識にはない。
● 現政権の施策は、小泉政権以前(道路公団民営化)のやり方に戻ろうとしている。

さらに、おさらいをしてみよう。
★ 高速道路の民営化と無料化を混同してはならない。
  理屈から言えば、民営化とは民間企業の事業だから、
  本来無料化などあり得ない話しだ。ここに何らかの策を講じない限り、
  高速道路無料化は机上の空論となってしまう。
★なぜか民営化されたはずの道路会社だが、
  借金の返済方法から新規の整備まで、国(官)の意向で行われている。
★ つまり、高速道路無料化は、民営化も含め、従来までに作られてきた
  スキームをすべて白紙にして臨み、 初めて実現するテーマということになる。

改めて、世の中のスキームを変えるには政権交代が絶対条件であることを知った。
私の経験では、野党の質疑に対して与党内閣が、
「それはいい! ぜひ採用することにしましょう」
なんていうシーンを見たためしがない。

民間では、いい意見はどしどし採用するのが常であるが、この世界にはない。官の「浮世離れ」の是正こそが、まともな国への第一歩ではないだろうか。
2009.05.12記

緊急追記:「小沢代表辞任!」

これが小沢流の反撃だ!

 
5月11日夕方5時に行われた、小沢代表辞任の緊急会見。一番印象的だったのは、笑顔を絶やさず淡々としていた点で。いわゆるふっきれた感があったこと。文中の意図を感じたのは、冒頭で「オッ、マイクが多いな」と思わず口に出てしまったところ。それこそが会見の最大の目論見だったはずだからだ。夕方のニュース時間にあてているわけだから、まさしく計算どおりに違いない。

5月11日、小沢一郎民主党代表が代表を辞任するとの緊急会見があった。今後は速やかに新しい党代表が選出され、新たな政局展開を迎えることだけは確かなことだ。
私が注目したいのは、ここでのテーマである「権力」のこと。
主に政治、行政、司法の三権力の品格について説いているが、実は第四の権力がまぎれもなく存在していることを言わざるを得ない。それは「メディア」ではないか。

辞任タイミングの時期などの賛否はともかく、西松問題によって小沢氏や民主党への支持率が減少傾向にあったことだけは間違いない。そこで、メディアによって様々な憶測や論調がなされ、それに世論が大きく影響を受けた格好だ。つまり、メディアが正当にできる一種の「権力」により、大きな異変も難なく起こってしまうという恐さだ

今回の辞任会見は、それらを逆手にとった小沢流の反転攻勢と見た。
そのメディアを活用して、今まではさんざん浴びた非難を、「辞任」という一言でかわし、今度は「民主党の行方や期待への一点」に注目させた。
現に5月11日夕方のニュースから、この辞任劇一色。つまり、小沢氏はメディアという権力を事実上席巻したことになる。これこそが戦略的反撃なのだ。

間違いなく、ここ当分は関連のことがずっと報道されることになる。それこそワイドショーまでもが民主党一色となる。必然的に政権交代という文字も乱舞するし、脱・官の重要性も大きな扱いで問われることになるだろう。それこそが小沢氏の最大の付け目ではないかと思ったのだ。
小沢氏は、しゃべりが下手だから世間での人気は二分している。しかしいざという時の攻勢の術を知っている。良くも悪くもしたたかなのだ。

いずれにせよ、政局が大きく動き出したことだけは間違いない。まさに政権交代は夢物語ではなくなった。


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