No.027 高速道路無料化、なんだかイケそうな気がする〜♪ だけど

 
生活・環境・未来のための緊急経済対策(骨格)を発表する民主党の直嶋正行政調会長。

自民党のドタバタ劇(反麻生と地方選総括のごちゃ混ぜ解散直前騒動)のさ中、野党はちゃっかりマニフェスト(骨子含む)を発表している。それは総選挙を前に当然のことをしているだけ。自民党も近々やむなく「後出しジャンケン」でマニフェストを発表することになるだろう。 さて、民主党はかねてより「高速道路無料化」を公約してきたが、現段階では「生活・環境・未来のための緊急経済対策(骨格)」(*カタいし、長い!)の中で、次のマニフェストに導入すべく、直嶋正行政調会長が骨子を発表した。
この中身は子育て支援から埋蔵金の活用までテーマが膨大なので、こと道路関連だけに絞って私見を述べたい。 道路と関連環境政策については、おおよそ次のとおり。 青字 は当方の印象と見解。

高速道路無料化
首都高速、阪神高速を除く高速道路料金を、原則無料化する。これにより、生活コストを引き下げ、また地域活性化を促進する。
・・・・・・大都市部への流入に際し、ロードプライシング制度を導入するのは当然だ。さらに各高速道路の出入り口の数を大幅に増やしていかないと(料金所建設が要らないから、コストは膨大ではない)、無料化による本当の地域活性化(渋滞緩和も含む)は功を奏さないこともつけ加えたい。
 

暫定税率廃止・直轄事業地方負担金廃止
2.5兆円の減税を実施すると共に、直轄事業に対する地方負担金制度を廃止し、地方の自主財源を増やすことによって、地域の実情に応じた生活改善策を支援する。
・・・・・・暫定税率自体の廃止には反対ではないが、その分新たな環境関連、道路補修、道路関連償還債務などの財源に充てるのが自然だと考える。ガソリン代が下がることは利用者にとっては好都合かもしれないが、中長期的に見て後述している次世代エネルギーの早期実現の弊害になるような懸念がある。ここらへんの矛盾を整理しないと、民主党もばらまきか! と揶揄される可能性がある。 直轄事業うんぬんに関しては、地方分権とリンクするので、あえてここではコメントしない。

新しいライフスタイル、新しい価値の実現を支援する(1.6兆円程度)
太陽光発電やエコカー普及などの財政政策に加え、再生可能エネルギー分野における固定価格買い取り制度の速やかな導入などを含めた大胆な政策を講じることで、国民のライフスタイルや価値観の変化に対応した新しい市場・産業の育成を推進する。
・・・・・・自民党を含め、すべての政党の政策で総論としてこれらに反対なところはない。これからは、明確かつ具体的な工程表を明示するところにきている。

太陽光パネル設置促進等
住宅用太陽光パネルの設置に対する半額助成など再生可能エネルギー導入に対する経済的支援を実施する。
・・・・・・同上。ただし、現状のような一時的な施策ではなく、恒久的とは言わないまでも、支援の方法や期間についてもさらに一考すべき。

 
短中期的には、今最も理想的なシステムとして世界中から注目されているハイブリッド車。写真はレクサスHS250h。プリウスから始まって、トヨタがすべての車種にハイブリッド機構を導入できることを示した象徴的なクルマ。通常で考えればこのクラスのクルマとしての燃費のほぼ倍の数値を示すから、ユーザーにとって魅力的には違いない。

次世代自動車購入支援
一定基準以上の低燃費車、ハイブリッド等の環境対応車への買い替えについて、200万台程度を対象に最大30万円の促進策を実施する。
・・・・・・同上。短中期的には日本(特にトヨタ。対抗でホンダ)のハイブリッド技術が世界規模でニーズが拡大する。大切なことは、そこを終着点にしないという展望だ。化石燃料だけに依存しない内燃機関(EV含む)の健全で速やかなな普及のための国策とも取れるような施策があってもいい。

環境・エネルギー技術の開発促進
水素燃料電池、石炭ガス化発電、海水淡水化等浄造水技術など次世代の環境エネルギー技術の開発を促進するための投資を行う。
・・・・・・当然だ。この項で民主党は触れていないが、前回書いたバイオエタノール技術の研究開発は着実に進みつつある。従来の産学共同をさらに発展させ、産官学共同が誰にでも見えるような形で行うべき時期にきているものと思う。


これはトヨタのエコカー減税の説明書き。各社だいたい同じようなものでTVCMを含め現在アピールの真っ最中。今回の減税策は時限施策であり、恒久的なものではない。つまり、今は良くてもこれが切れた時に、自動車メーカーにとってもユーザーにとっても納得がいくような何かを今後模索していかなければならない。今回のエコカー減税策で、少なくてもクルマには様々な税金が課せられていることが分かっただけでも意義はあった。 

高速道路無料化は真の先進国の証明

高速道路無料化は、基本的に賛成であることは以前のコラムでもさんざん述べさせてもらった。私が賛成する理由は次のとおりだ。
●高規格道路(高速道路)整備は、いつの日からか「社会資本としての価値あるインフラ整備」から「造るための目的」と化してしまった。
●自動車には購入、維持、移動のいずれにも課税がなされている。その額の適正度を一度も検証することなく、その財源の一部(大半)を使って道路整備に充て、その道路を利用者の負担とすることは、事実上の二重課税ではないか。もう、受益者負担などというご都合主義の大義名分文言を使う時代ではあるまい。
●真の自動車先進国で、上記のような税収を元に道路整備に充てている国は見当たらない。これでは日本は「自動車技術先進国」には違いないが、自動車を取り巻く仕組みはいつまでたっても後進国と言われてもしょうがない。
●無料化にすると、さらなる渋滞を誘発させるという論調もあるが、それは有料か無料かが大きな原因ではなく、整備設計にトータルで見た分析、検証、グランドデザインがないからだと思っている。
●無料化して、運営を国営化に戻したら、何のための民営化だったのか、という罵声が飛んできそうだ。もっと言えば、借金の返済はどうするんだ、という声もあるだろう。ちょっと待ってほしい。元々なぜ40兆円を超えるような負債に膨らんでしまったのだろうか。それは政官、地方自治体が無原則に整備優先でやってきたプール制のツケが溜まったことに他ならない。

これを機に、本当に必要な道路とそうでない道路、そして時代に適応した道路行政をシビアに検証するチャンスにはできないだろうか。今後国民はそれらを大いに監視するべきだ。民営化うんぬんは手段であって決して目的ではないはずだ。
受益者負担とは自動車利用者に限定しているが、主に自動車利用者なのであって、道路の恩恵は生活者全員が被っているのが現実だ。そこを理解しないと、いつまでたっても道路の真の在り方など成立、確立しない。
もっと言えば、歩行者も自転車も、いわゆる弱者を除き道路に対し一定の理解と同時に責任を持つことも求められる。例えば今回の自転車の法改正一つとっても、真面目に自転車を利用していた人には気の毒だけど、突き詰めれば一人一人が好き勝手にやってきたツケでしょう?
同じように結局は高速道路の問題だって、国民の無関心が招いたツケではないだろうか。無料化でいろんな問題が露呈する。だから必死で問題解決させようということになる。それこそが一番肝心なところではないだろうか。
2009.07.17記


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