No.023 地方分権とコンビニ弁当・・・・他!?

前回書いた東国原知事、橋下知事らの「地方の乱」とも言える中央政界への提言と行動は、尽きるところ「旧態依然の現在の仕組み」に対する完全なアンチテーゼだ。
「地方分権」は、憲法改正などといっしょで1イシューでは決して済まされない。つまり、中身と工程こそが肝心で、どうやら地方自治の首長や市長らの提案、民主党の提案、渡辺喜美/江田憲司議員らの「日本の夜明け」の提案、各地方分権委員会の提案などによって、その中身、工程は微妙に異なっているようだ。
が、行き着く先に共通していることは「霞が関の仕組みの大変革」であることだけは間違いない。それほど、今の官僚システムが著しく時代遅れであることを如実に示していることになる。東国原知事が言うまでもなく、この旧態依然の状況対応先延ばしは、国家自体の疲弊をも意味する。待ったなしなのだ。

先日、セブンイレブン店舗が賞味期限切れの弁当を、価格を下げて販売していることで、セブンイレブン本部がルールに反すると指導したことに関し、公取は本部に対し逆に改善命令を発した。つまり販売店側の論理が公取の見解と合致したことになる。
そもそもコンビニエンスが普及した最大の理由は「利便性」だ。本部にすれば、決められた価格は絶対に変えて売ってはならない、と突っぱねてきたわけだが、その仕組みによって、店舗の疲弊はもちろん、大量の食料廃棄にもつながり、時代の流れはその利便性オンリーの姿勢にもはっきりノー(変革)を突きつけたことになる。
時代の最先端をいっているかに見えるコンビニ業界に対してでさえも、ユーザーは微妙に様相を変える世情を見て、「利便性だけでなく、価格や環境面でも時代に即応しろ!」と言っているようにも思える。

コンビニの各店舗が地方自治体だとしたら、コンビニ本部はまさに霞が関。現場と事務方は古今を問わず対立するものだけど、今回の地方の乱とコンビニ店舗の乱とは、あまりにも象徴的な部分で酷似している。
時代の要望に応えようと必死なのは、いずれも直接ユーザーと向き合う現場であり、状況の変化についていけないのがデスクにしがみついている事務方、という構図だ。

変革は、すべてに求められている!

実体と仕組みが著しく乖離しており、変革を余儀なくされているのは何も霞が関とコンビニ業界だけではない。ほとんどすべての業態、と言っても過言ではないのが「今」ではないだろうか。
例えば自動車。
ハイブリッド車などのエコカーだけは順調に販売台数を伸ばしているが、乗用車全体を見ると、この1年で販売台数をなんとか維持できているのは軽自動車だけ。小型車で約22%減、普通車に至っては約35%減と悲惨な状況だ。
ここで考えねばならないのは、メーカーは単に台数維持を模索するかではなく、変化に対し敏感に対応する姿勢だ。そこには、

● 新しい付加価値の創造。

● 少子化(人口減少)という現実と向き合った生産や販売の規模や手法。

● 小手先ではない、子供世代への自動車興味の創出。

などが求められるだろう。すでに対応を始めないと、あと3年弱で切れるエコカー優遇措置の後は、おそらく目を覆いたくなるような状況だろう。
もはや、自動車は事業規模だけで生産し販売する時代ではないことをあのGMが具体的に教えてくれている。

次にエネルギー。

 

6月24放送の報道ステーションでの特集「ニッポン元気宣言」。松岡修造氏の案内で、バイオエタノールの未来を熱く捉えていた。写真は岐阜大・高見沢教授らと共同で開発を進める株式会社コンティグ・アイ http://www.contig-i.co.jp/  より。

   
 

岐阜大・高見沢教授によれば、18ホールのゴルフ場1ケ所で年間約100トンの芝が刈り取られ、その焼却費用は年間1000万円にも上るという。その廃棄芝に着目した教授らのバイオエタノール製造工程は、50度のお湯に入れ⇒独自に開発した酵素を加え分解、糖化、発酵⇒アルコール濃度3%のバイオエタノール液の生成⇒蒸留、濃縮⇒100%燃料用バイオエタノール、という工程。書くと簡単だが、この夢のような発明、発見をどう生かしていくかが今後大いに注目される。

電気自動車の量産販売や燃料電池車の開発など、脱・化石燃料依存のムーブメントは明らかに起こっているが、ハイブリッド車をもってしても、結果的には化石燃料に依存している。ただ使う量が少ないだけだ。
そこで注目したいのが「バイオエタノール」。
バイオエタノールは、原料としてトウモロコシなどの穀物を利用するが、口に入れる食料ベースということで、穀物相場が急騰し社会問題化した経緯がある。
しかし、今評判になっている製法は岐阜大の高見沢一裕教授らが進めている、ゴルフ場で刈り取った廃棄芝から製造する手法だ。これなら原料に困るどころか、半永久的に原材料が枯渇しないから安心だ。理論的には芝はもちろん、ほとんどの繊維から製造は可能というからなおさら頼もしい。
現在小規模プラントで実験的に進められており、コストも1リットル50円程度に抑えられると言われている。教授の言葉を借りれば、エネルギーの地産地消が可能という、まさに国内自給型のエネルギーであろう。
自動車メーカーにとって何より期待できるのが、電気自動車などと異なり既存の内燃機関製造ラインを温存できる可能性を持つことだ。変革とは、決して従来のものをすべて無くすだけのことではない。
バイオエタノールに含まれる炭素は植物の光合成によって固定された大気中の二酸化炭素に由来することから、エタノールの燃焼によって二酸化炭素が大気中に放出されても地表に存在する炭素の総量は変化しないと考えられている。つまり、温暖化対策にも寄与できる可能性は大いに高い(*一部ウィキペディアより抜粋)。

最後に出版。
出版物は、その取り扱いの大方を「取次を通じて」というシステムに依存している。この仕組みが機能することで、小規模出版社でも市場に流通させることができたことは間違いない。
が、この10数年、出版物の流通は質も量も大幅に右肩下がりで経緯してきた。一概に仕組みなどの構造的な問題だけで捉えるべきではないが、従来の手法が通用しなくなってきたことだけは確かだ。
出版物の減退で辛いところは、世の中のニーズとしての「情報」自体が失われたわけではないことだ。依然として情報は誰もが欲している。しかし従来のような数字は、いかなる出版社(新聞含む)も望めない。
音楽ソフトで例えると、音楽自体のニーズが衰えていないこととやや似ている。ちょっと前までソフトはレコードやCDだった。それが今やダウンロードという形に進化、変貌した。音楽ニーズが変わったのではなく、パッケージが変わったのだ。
出版が、そのまま音楽ソフト革命とイコールだとは言わないが、少なくてもコンテンツ事業者としての出版社が持つ膨大なコンテンツを「従来発想」で流通させようとしても、徒労に終わる可能性が高い。もしかしたら、すでに出版社は出版社のやり方で出版事業ができなくなっているのかもしれない。

表は出版科学研究所調べによる、日本の出版販売額(取次ルート)。おおよそ14年前をピークに、以後は下がり続けていることが分かる。出版部数も販売額とほとんど比例した減少となっているのが実情だ。

いくつかの例を挙げたが、世間はそこまできていることだけは間違いない。変革は、いずれも待ったなしだ。それらを実現できる唯一のファクターの大元が政治と行政であるという現実に、今の我々にとっての最大の不幸があるのかもしれない。

2009.07.04記


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